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パワープレイス株式会社の特集記事
第1回 【企業の顔〜訪れる度に変わる受付】 パワープレイス株式会社 田村佳司
● 企業の顔・プレゼンテーションの場
通常、オフィスの入口には「受付」があります。受付は「企業の顔」と言われている通り、企業にとってみれば「晴れ」の舞台空間です。ですから受付は殆どの企業で、綺麗に飾られた(=独自性やおもてなしの姿勢などを表現された)場となっている訳です。たとえその奥の事務所が狭くて地味な空間で、社員が「外ヅラばかり良くても困る」と思う事がたとえあったとしても、少なくとも外ヅラは企業にとって重要なのです。
そして受付が「顔」であれば、そこは「会社を表すプレゼンテーションの場」であるという事です。プレゼンテーションと言えば、顧客に説明したり、製品展示したり、パネル展示したりする事を想像しますが、受付にはそういった行為・展示なども含めて「企業を空間で表現する」役割が求められているのです。
そうなると、これら「企業が伝えたいこと」を、空間としてどうまとめていくかが空間デザイナーの腕の見せどころです。恐らくクライアント側からは抽象的要望・具体的要望など色々とだされますが、その中から何が実現可能か、できないかを判断していかねばなりません。例えば、企業の創業期の商品を展示すれば企業姿勢・信頼性などが表現できますが、一方の「将来性」表現はどうすべきかなど、色々な観点からの検討が必要となります。
●作った瞬間から陳腐化が始まる
企業の事業・業務形態・商品は常に変化しています。竣工時、どんなに完璧な空間ができたと思っても、ビジネスが変化するうちに「接客場所が足りなくなった」「受付専任者が必要になった」「セキュリティドアを設けたい」などの変更ニーズは、出てきて当然なのです。実際にはデザインの陳腐化というより、正しくは「ニーズ変化と空間のギャップ」です。
また「何となく見慣れてデザインに飽きてきた、時代の感覚からだんだん遠のいていく」といった感覚も自然に出てくるものです。逆に、毎日見ている社員は「陳腐化」に気付きにくい事もありますので注意も必要ですが、一般常識としては「先進的デザインは陳腐化も早い」という事を知っておくべきでしょう。
●使い手のためのデザイン
企業は、デザイナー作品を作らせるために設計をデザイナーに依頼しているのではありません。それよりも出来上がった空間を、使い手となる入居ワーカーが自身の空間として上手に使っていけるかが重要です。
そういう意味で、デザイナーが「空間を作り込み過ぎない(一時の完璧性を追及し過ぎない)」という事は重要ではないでしょうか。受付の位置を変えたい、花を飾りたい、季節感を演出したい、企業の商品を置きたい、パネル展示したい・・・竣工後にそういった要望が出た際も、企業は工事(コスト)をかけずに対応したい(そんなデザインを求めている)のです。
● 変化し続ける受付例
私の会社では数年前より、「変わり続ける受付」を実践しています。
この場を作った主旨の一つは、まず「モノを作る側の姿勢」の表現です。このために、固定的空間(=完璧を前提とした設計)ではなく、その時々で表現テーマ・内容も変えてゆく「変化する空間」とした訳です。(⇒2ヶ月に1度、自分達で作り変える受付)
もう一つは、来訪者に何か「プレゼント」を差し上げたい、と考えた事です。設計事務所の性格上、「この商品を買ってください」というようなモノはありませんが、お客様のビジネスに役立つような「インスピレーション」を感じ取って頂くための展示をしています。(⇒3画面の情報表示ディスプレイ)
もちろん、固定的デザインに比べてこの「常時変更型」が正しい、というつもりはありませんし、今後実際には固定的なデザインがほぼ主流を占めるであろうと考えています。しかしその際にも、「将来の変更要因を想定して解決法を事前に考えておく」・「入居者自身が手を加えていける余地を作っておく」といった『変化を前提とした設計手法』は不可欠であり、ここではその特殊解として「変化し続ける空間」を実践しているという訳です。
●写真・イラストの説明
?受付全体
内装工事によるインテリアデザインは表現力豊かですが、カッコ良いデザインも一度表現してしまえば「終わって・そのうち飽きて」しまいます。ここでは受付正面(背景)として白塗装した壁(背景)だけを作っています。これを「毎月、自分たちで塗り替えて絵を書こう」という意見もありましたが、まだやってません(笑)。
?パーツを組み合わせて作るカウンター
アルミパイプの展示用部材ですから、モジュール寸法などのキメゴトはありますが、パズルのように組み替えが可能です。ここに電話や小物を置き、写真・グラフィックデザイン、照明器具を組み込んで使っています。
?季節感のある受付
これは2006年正月のもの。ほぼ2ヶ月に1度の頻度で変更していますが、特に正月は飾っておける期間がとても短いのが難点です。
?社員が作る・変える
作業は大勢で行います。昨今、社員が一緒に作業をする事は減っていますが、こういった作業は、組織の一体感を持たせる事にも貢献しています。
?デザインのショーウィンドウ
液晶モニタを上下3台並べて設置し、受付裏側にあるパソコンと繋いでいます。自社で作った提案書、実績写真、Flash動画など、3画面で違う内容を表示しています。
通常、オフィスの入口には「受付」があります。受付は「企業の顔」と言われている通り、企業にとってみれば「晴れ」の舞台空間です。ですから受付は殆どの企業で、綺麗に飾られた(=独自性やおもてなしの姿勢などを表現された)場となっている訳です。たとえその奥の事務所が狭くて地味な空間で、社員が「外ヅラばかり良くても困る」と思う事がたとえあったとしても、少なくとも外ヅラは企業にとって重要なのです。
そして受付が「顔」であれば、そこは「会社を表すプレゼンテーションの場」であるという事です。プレゼンテーションと言えば、顧客に説明したり、製品展示したり、パネル展示したりする事を想像しますが、受付にはそういった行為・展示なども含めて「企業を空間で表現する」役割が求められているのです。
そうなると、これら「企業が伝えたいこと」を、空間としてどうまとめていくかが空間デザイナーの腕の見せどころです。恐らくクライアント側からは抽象的要望・具体的要望など色々とだされますが、その中から何が実現可能か、できないかを判断していかねばなりません。例えば、企業の創業期の商品を展示すれば企業姿勢・信頼性などが表現できますが、一方の「将来性」表現はどうすべきかなど、色々な観点からの検討が必要となります。
●作った瞬間から陳腐化が始まる
企業の事業・業務形態・商品は常に変化しています。竣工時、どんなに完璧な空間ができたと思っても、ビジネスが変化するうちに「接客場所が足りなくなった」「受付専任者が必要になった」「セキュリティドアを設けたい」などの変更ニーズは、出てきて当然なのです。実際にはデザインの陳腐化というより、正しくは「ニーズ変化と空間のギャップ」です。
また「何となく見慣れてデザインに飽きてきた、時代の感覚からだんだん遠のいていく」といった感覚も自然に出てくるものです。逆に、毎日見ている社員は「陳腐化」に気付きにくい事もありますので注意も必要ですが、一般常識としては「先進的デザインは陳腐化も早い」という事を知っておくべきでしょう。
●使い手のためのデザイン
企業は、デザイナー作品を作らせるために設計をデザイナーに依頼しているのではありません。それよりも出来上がった空間を、使い手となる入居ワーカーが自身の空間として上手に使っていけるかが重要です。
そういう意味で、デザイナーが「空間を作り込み過ぎない(一時の完璧性を追及し過ぎない)」という事は重要ではないでしょうか。受付の位置を変えたい、花を飾りたい、季節感を演出したい、企業の商品を置きたい、パネル展示したい・・・竣工後にそういった要望が出た際も、企業は工事(コスト)をかけずに対応したい(そんなデザインを求めている)のです。
● 変化し続ける受付例
私の会社では数年前より、「変わり続ける受付」を実践しています。
この場を作った主旨の一つは、まず「モノを作る側の姿勢」の表現です。このために、固定的空間(=完璧を前提とした設計)ではなく、その時々で表現テーマ・内容も変えてゆく「変化する空間」とした訳です。(⇒2ヶ月に1度、自分達で作り変える受付)
もう一つは、来訪者に何か「プレゼント」を差し上げたい、と考えた事です。設計事務所の性格上、「この商品を買ってください」というようなモノはありませんが、お客様のビジネスに役立つような「インスピレーション」を感じ取って頂くための展示をしています。(⇒3画面の情報表示ディスプレイ)
もちろん、固定的デザインに比べてこの「常時変更型」が正しい、というつもりはありませんし、今後実際には固定的なデザインがほぼ主流を占めるであろうと考えています。しかしその際にも、「将来の変更要因を想定して解決法を事前に考えておく」・「入居者自身が手を加えていける余地を作っておく」といった『変化を前提とした設計手法』は不可欠であり、ここではその特殊解として「変化し続ける空間」を実践しているという訳です。
●写真・イラストの説明
?受付全体
内装工事によるインテリアデザインは表現力豊かですが、カッコ良いデザインも一度表現してしまえば「終わって・そのうち飽きて」しまいます。ここでは受付正面(背景)として白塗装した壁(背景)だけを作っています。これを「毎月、自分たちで塗り替えて絵を書こう」という意見もありましたが、まだやってません(笑)。
?パーツを組み合わせて作るカウンター
アルミパイプの展示用部材ですから、モジュール寸法などのキメゴトはありますが、パズルのように組み替えが可能です。ここに電話や小物を置き、写真・グラフィックデザイン、照明器具を組み込んで使っています。
?季節感のある受付
これは2006年正月のもの。ほぼ2ヶ月に1度の頻度で変更していますが、特に正月は飾っておける期間がとても短いのが難点です。
?社員が作る・変える
作業は大勢で行います。昨今、社員が一緒に作業をする事は減っていますが、こういった作業は、組織の一体感を持たせる事にも貢献しています。
?デザインのショーウィンドウ
液晶モニタを上下3台並べて設置し、受付裏側にあるパソコンと繋いでいます。自社で作った提案書、実績写真、Flash動画など、3画面で違う内容を表示しています。
会社 : パワープレイス株式会社
住所 : 東京都中央区新川2-4-7
業種・業態 : 空間設計デザイン
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