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第23回 【知識時代のオフィスデザインを考える】 株式会社ミダス 小澤清彦

モバイルワークの実践とチームワークによる知識創造が必須となりつつある今日のビジネスシーンにおいて、ワーカー同士の交流の場としてのオフィス機能がクローズアップされています。オフィスを人と人との社会的絆を強固にするための「場」とすることは現代のオフィスづくりにとって主要な関心事です。なぜなら、組織の中に生き生きした知識のネットワークを構築し、情報の共有や知識創造を促進することは、知識時代の企業にとって成長の鍵を握る大切な要素であり、そのためには、フェイスツーフェイスの情報交換が生まれやすい環境が重要だと考えられているからです。こうした状況を踏まえて、コミュニケーションを良くするためにパネルなどで個々のデスクを囲い込まないオープンなオフィスへの潮流があるわけですが、単に見通しの良いオフィスをつくるだけで、コミュニケーションの活性化や知識ネットワークの形成という成果に結びつくのでしょうか。ここでは、知識時代のオープンオフィスをデザインする上での課題について、ワーカーの業務行動の実態を踏まえた考察をしたいと思います。
オープンオフィスと集中作業
現代のオフィスワーカーの業務行動を調査した統計によると、約60%はPCに向かって行う集中作業、約20%は電話あるいは自席での打合せになります。残りの20%は自席を離れての会議や休憩などです。ここで、約20%の電話や自席での打合せは他のワーカーにとって騒音源になる行動です。つまり、自席の周りに5人の同僚が居れば、ほぼ間断なく騒音にさらされるということになります。この点から類推するとオープンオフィスは個々の

非公式のコミュニケーションの重要性

非公式なコミュニケーションを誘発するデザイン

アクティビティーベースプランニング
これまで述べてきたことと矛盾するように聞こえるかもしれませんが、オープンオフィスがワーカー同士の気配りによってある程度プライバシーを保つとしても、時には引きこもって集中作業したい場合があります。また、オープンなワークデスクでの非公式なコミュニケーションよりもパネルで囲われた打合せコーナーの方が相応しい時もあるでしょう。

ベリングポイント大阪オフィスの事例
アクティビティーベースプランニングの考え方が始めて実践されたのは1998年のことです。アルコアというアメリカ企業が本社ビルの移転を機に社員はビル内の好きな場所で仕事ができるというコンセプトのオフィスをつくったのです。当時はモバイルワークのインフラがまだ未整備でしたので、この画期的なアイデアが広く展開することはありません

ベリングポイントは新しいワークプレース戦略に対して積極的で、弊社が用いているオフィス変革の受入態勢を評価する指標でも非常に高いレベルを示していました。フリーアドレスやアクティビティーベースプランニングの考え方を受け入れる素地は出来上がっており、社員同士の交流の場としてのオフィス機能については、客先に出向して仕事をすることが多いため、「スタッフたちが帰ってきたくなるオフィス」という明確な目標が示されました。オフィスの規模は約180坪と小さめですが、集中ブース、可変型のフリーアドレスデスク、ディスカッションルーム、ファミレス風打合せコーナー、ジャクージ風ソファー、ハイカウンター席など多様な業務の受け皿を用意し、社員の方々に自由に使っていただけるようにデザインされています。結果は、オープン初日から全く違和感なく社員の方々がオフィスに馴染んで下さり、期待以上でした。今回は、移転前に個室オフィスをもっていたマネージングディレクターの方々もオープンオフィスに席を設けるという決断をしましたが、実際に働いてみた結果、スタッフとのコミュニケーションが円滑になった等の肯定的な評価を頂いております。また、社員の顔写真つきミニパーソナルホワイトボードを個人ロッカーの扉につけたり、マッサージチェアの個室を設けたりという試みも評判が良いようです。お陰様でこのオフィスは、本年度の日経ニューオフィス賞を受賞いたしました。

※文中の写真は全てベリングポイント大阪オフィス

株式会社 ミダス
代表取締役:奥村 元弘
業態:デザイン・PM
住所:東京都中央区築地3−9−9ラウンドクロス築地ビル5階
TEL:03-3524-4141
URL:http://www.midasco.co.jp


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