開業や移転を考える際に比較検討したい代表的なビジネスエリア。前々回の都内編、前回の関西編に続き、ここでは名古屋で人気の高いビジネスタウンを特集。人気の理由を紐解いていく。
名古屋市は政治、経済、文化面で中部圏の中心地となっており、今もなお発展を続けている日本三大都市のひとつである。名古屋市の中でも特に大きいオフィス街としては、名古屋駅、丸の内、伏見、栄が挙げられる。これらの地区は隣接しており、徒歩で行き交うことが可能であるが、それぞれが異なる特徴を持っている。
出典:名駅不動産鑑定日誌
名古屋城の築城の際に形成された商業の中心地であり、伝統的な歴史あるオフィス街の丸の内。多くの企業がオフィスを構えるビルが立ち並んでいるが、名古屋高速都心環状線を挟んで向こう側には、愛知県庁や税務所、裁判所、警視庁などといった建物が碁盤の目状に並んでおり、どこか落ち着いた雰囲気に包まれている。地下鉄鶴舞線、桜通線が通っており、交通の便に関しても申し分ない。名古屋商科大学の高層ビルキャンパスをはじめとする教育機関や、ショッピングや病院など生活をする上で必要となってくる施設が充実しているため、住居を構える土地としても適している。
出典:BIS circle
かつて旧東海銀行本店(現三菱東京UFJ銀行名古屋営業部)が立地していた名残で、現在も金融や証券関係の企業が名古屋支店を構えている。他エリアに比べてオフィスの賃貸料金が低いことや、営業機能を担うことが多い名古屋の企業にとって重要な駐車場を比較的確保しやすいということも人気の理由の一つである。病院やチェーン店のカフェ、居酒屋などが点在しており、アフターにも困ることはない。名古屋市科学館のすぐそばに白川公園という大きな公園が立地している。地下鉄は、東山線と鶴舞線が通っている。
江戸時代に城下町として誕生して以来、常に名古屋の中心地として君臨し続けてきた。その名残からか、地上にはオアシス21や三越をはじめとする大型商業施設や、ルイヴィトン、コーチ、グッチなど高級ブランドの専門店が立ち並んでいる。また、地下にはサカエチカやセントラルパークといった地下街が広がっている。近代的な高層ビルが立ち並ぶ栄であるが、すぐそばには数々の公園や広場が駅から南の方向に一列に並んでおり、都会の息苦しさから一旦解放され、リフレッシュすることができる空間も備わっている。アフターが充実することは間違いない。また、東山線と名城線の2本の地下鉄が通っていると同時にバスターミナルも充実しているため、交通の便についても申し分ない。
なんといっても一番の強みは新幹線のターミナル駅であるということだろう。他の3つのエリアとは異なり、地下鉄だけでなくJR線も通っている。また、名古屋駅周辺にある名鉄名古屋駅からは一本で、たった30分ほどの所要時間で中部国際空港にアクセスすることもできる。これなら海外と頻繁に取引を行う企業にとって、適した立地であると言えるだろう。さらに、2027年にはリニアモーターカーが開通する予定であり、注目が集まると同時に、さらなる交通機関の充実が図られている。1999年には、オフィス棟とホテル棟をもつ200メートルを超える高層ビルが構築され、現在ではツインタワーとして親しまれている。この再開発を皮切りに高層ビルの構築が進み、今も尚名古屋駅周辺では活性化が進んでいる。そのように進化をやめない名古屋駅周辺には多くの株式会社がオフィスを構えている。
近接している4つのエリアではあるが、それぞれが少しずつ異なる雰囲気に包まれている。交通機関や、周辺施設などはビジネスをする上であまり関係のない要素だと思われるかもしれない。しかし、仕事上の利便さのみならず、社員がリフレッシュするためにアフターを充実させるという配慮も、オフィスを構える上では重要な要素の一つと言えるだろう。また、おしゃれなカフェがそばにあれば、取引先との打ち合わせの場として活躍するかもしれない。
企業の特色を分析した上でどのエリアを選択すべきかを考慮し、ビジネス面でも従業員にとっても最適なオフィス作りを目指していきたいものだ。