SOHOという働き方 - 準備から続けるために必要なこと、そしてメリット・デメリットまで

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“クオリティオブライフ”や“ワークライフバランス”といった言葉の普及や、インターネット環境の整備とともに増え続けるSOHOという働き方。「一億総活躍」や「地方創生」との親和性も高く、これからますます発展が見込まれる働き方といえる。今回は、SOHOを始めたい人が準備すべき事や注意点を紹介していく。

 

SOHOの働き方について

SOHOとは?

SOHOとは、「Small Office Home Office」を略したもので、小さな部屋や自宅をオフィスとして働く事業者やワークスタイルのこと。クライアントから外部委託として業務を請け納品するというのが主な仕事の流れで、PCを使った作業が多いのも特徴的だ。仕事の内容は多岐にわたるが、自身のスキルや得意なこと、好きなことを活かして働く人が多い。

 

その他のビジネス形態との違い

企業に属さず、好きな場所でパソコンを使って働くことを「SOHO」と認識をしている人が多いが、実は明確な定義は存在しない。企業に属しながらの在宅ワークや個人事業者、社員が1人または夫婦だけの会社を含む場合もある。

また、開業届を出している場合はSOHO、出していない場合はフリーランスというような分け方や、事業の拡大志向を持つのがベンチャーで、持たないのがSOHOという分け方をする場合もあるようだ。

 

SOHOのメリット

SOHOのメリットは大きく分けて2あると一般的には言われている。

まず、好きな時に好きな場所で働ける点だ。企業に属していても、昨今は在宅ワークが増えてきたのでSOHOじゃないと出来ない、というほどのメリットでもなくなってきているが、基本的にSOHOでは就労規則がないため、働く場所も時間も自身で自由に決める事が出来る。

2点目は、好きな仕事を選べる点だろう。企業に属している場合、指示された仕事を断れないケースが多く、かつ異動などによって気に入っていた仕事から離れないといけないケースなどもあり、そのコントロールは個人レベルでは不可能だ。SOHOの場合は自身の「やりたい」を基準に仕事を選ぶ事が、ある程度ではあるが、出来る可能性が高い。

 

SOHOのデメリット

一方で、デメリットもある。

まず一番のデメリットは収入が安定しにくいことだろう。固定給ではなく歩合制の場合が多く、特に単発業務が多いため収入が安定しにくい傾向がある。また、これをデメリットと感じるかどうかは人によるところもあるが、管理、責任の範囲が格段に増えることも負担に感じるケースが多いかもしれない。スケジュールや収支等、すべての管理を自己責任で行う必要がある。また、それに付随し、業務以外の作業も増える。収支の経理処理や、業務を請け負うための営業活動、困ったときに相談できる人脈作り等、今まで経験したことがない業務が必要になることも多いだろう。

 

SOHOとして働く準備

業務内容を決める

SOHOをやりたい人の中には、既に業務の内容が決まっている人も多いだろう。まだ決めていない人は自分が好きなことや得意なことを軸に、どのような業務が委託されやすいかをリサーチすることも有効だ。

 

作業環境を決める

仕事内容が決まったら、次に作業する場所を決めよう。Small Office向けの物件を借りるか、自宅を作業場にするかのどちらかが一般的。Small Office向け賃貸には、オフィスビルの1フロアが細かく間仕切りされているタイプや、共用の空間に専用のデスクを置くタイプ等がある。

Home Officeは家の中に作業場を設けるので、マンションや戸建てなどその形態は様々。既に来客用の玄関や打ち合わせスペースが備わっているSOHOに特化した物件もある。ただし、居住用目的で借りたマンションやアパートをSOHOにする場合、規約や条件によっては制約を受ける場合やそもそもSOHOがNGという場合も。同居者がいる場合は許可も必要だろう。

また「いずれ仕事が軌道に乗ったら法人を設立したい」という場合は、法人登記が出来る物件かどうかも視野に入れて探すと良い。

 

屋号を決める

屋号とは店名や事務所名の事で、もともとは武士しか苗字を使えなかった江戸時代に武士と区別するため商人に付けたのが始まりといわれている。屋号はなるべく業務内容が伝わり、読みやすく、安心や信頼感を想起させるものが良いとされている。

また、「会社」や「法人」など、会社と誤認される恐れのある文字や、商標登録されている名称は使用できない事も覚えておこう。

 

ホームページの作成とSNSアカウントの作成

ホームページは、事業内容や実績の紹介・発信に役立つツールなので、ぜひ作成したいもの。屋号名にちなんだドメインの取得は、外部から見た信用度につながることも。また最近ではビジネス用SNSなども普及し、特に外部に発注しなくても自身で簡単にページを作れるので手軽だ。営業活動や人脈の構築などもよりスピーディに行えるSNSはぜひ活用していきたいツールである。

 

開業届を出す

開業届は事業の開始等の事実があった日から1月以内の提出が望ましいとされている。

出典:国税庁開業届について

 

開業届を出すと様々なメリットがある。まず、青色申告が行えるようになることが大きいだろう。青色申告は白色申告に比べ帳簿のつけ方が複雑になる為手間はかかるが、控除や赤字の繰り越し、家族への給与を経費にできる等メリットが大きいと言われている。

次に屋号名の入った銀行口座が開設できる。屋号欄に記載のある開業届を銀行に持って行くと、屋号名入りの銀行口座を作る事が出来る。クライアントからの入金をプライベートと分けておくことで、経理処理が簡素化できる場合も多くなる。

 

SOHOを続けるために必要なこと

SOHOは始めることが目的ではなく、続けることが重要です。始めることばかりに気持ちがいってしまい、どのように続けていくべきかを考えないで始めてしまうとうまくいかないことも出てきてしまうもの。以下に続けるために必要な代表的なものを見ていく。

 

経費について把握する

税金は、“収入”ではなく、経費を引いた“利益”が課税対象になるので、節税の為にもしっかり経費の計算をしておこう。どの項目が経費になるかは職種によって異なるが、業務に関わる事なら経費として認められる場合も多いので、専門家や税務署等で確認すると良いだろう。

 

帳簿付けの習慣をつける

青色申告の場合、帳簿も複雑になるので青色申告用のソフトやアプリ等を使うのもお勧めだ。経費になるものは領収書をもらい、交通費のように領収書が出ない場合はしっかりと記録しておこう。日々の帳簿付けを習慣にすればおのずと収入、経費、利益の推移がわかる。これらはSOHOを続けていくうえで重要な指標なので、しっかり把握し今後の業務展開に役立てよう。

 

営業活動・現状把握

たとえ素晴らしいスキルを持っていたとしても、それを必要とする人に届かなければ、仕事につなげることができない。SOHOで働く場合、日ごろから営業活動や人脈を広げる意識も大切になる。また業界の中での自分の位置を把握できれば、料金交渉やスキルアップの方向決めにも活用できる。

 

 

経理処理や営業活動、経営者視点での判断など、SOHOは会社勤めに比べて面倒な部分も多いかもしれない。だが、そこで得た人脈や信頼はすべて自分のものとして培われていく。少しの手間を乗り越えれば、その先に返ってくるものが大きいのもSOHOという働き方だ。

 

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