未来を見据えたオフィス作り - 働き方の変化に対応する環境とは

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現在いくつかの企業では働き方を見直す動きが見られている。時代の変化により、オフィスの作りにも変化が生じてきている。それに至る背景と、どんなオフィスにすべきなのかを考えていく。

 

現代日本の働き方により特に労働生産性を見直すことが求められる

現在、日本は少子高齢化によって世界的に見ても人口が急速に減少している。国立社会保障・人口問題研究所は、2010年に約1億2,800万人である日本の人口が2030年には1億1,522万人、2060年には32%減の8,674万人になると推計している。労働人口が減少するスピードは、さらに速く、総務省の『情報通信白書』によると、2060年には労働人口が4割以上も消失するという予測もある。人口が減少するということは、国内の消費人口が減ることを意味する。そのため、日本企業は現在、海外市場へ求める動きが激化しているが、安価な人件費を武器とした新興国や高い生産性を誇る先進国のライバル企業に勝つことは難しく、企業にとっては人材確保と生産性の向上が最重要な課題の一つとなっている。(日経ビジネスより)

企業は、生産性の向上、 業務の効率化、ワークライフバランス、 女性・中高年層や外国人等の多様な人材の活用等、多くの課題に取り組んでいかなければならないが、現在日本企業では、特に労働生産性を急速に高めていくことが求められていると言える。現在、長時間労働が当たり前になっていた日本では、労働生産性を重点的に見直す企業が多くなった。

労働生産性を見直す動きによって、最近、オフィスではなくカフェなどの場所でPCやクラウドを駆使して働く人たちが増えている。IT技術が発達したことにより、ノートPC1台あれば、移動中や外出先など、オフィス以外の場所で仕事ができるようになった。その結果、時間や場所や組織に縛られない、新しい働き方と言え、「働く場所=オフィス」という概念が変化してきている。近年では、東京都内を中心に、Wi-Fiや電源を完備したカフェが多数存在するなど、そうした働き方をする人に対応した世の中になってきている。また、誰でも使えるオフィスとしてのコワーキングスペースも増えており、同じ会社の人でなくても共に働くことや、会社の外でも仕事がしやすい環境が整っている。

 

多くの企業が業務効率化・生産性向上に対し前向きに取り組む

 ザイマック総研の研究調査によれば、約8割の企業が、「業務の効率化・生産性の向上」を働き方の課題にあげた。次いで、「従業員のモチベーション向上」、「社内のコミュニケーション活性化」と前向きな課題があげられた。多くの企業が、「業務の効率化・生産性の向上」を働き方の課題にあげているだけあって、オフィス以外の場所でメールやスケジュール、会社のサーバーにアクセスできるIT環境の仕組みを取り入れたり、従業員にノートPCやタブレットを支給している取り組みを行っている企業は、約6〜7割に達している。また、今後、中長期的(3~5年程度)には約8割が前向きな取り組みの意向を示している。

また、この研究調査によれば、従業員数(企業規模)が大きいほど、在宅勤務などの、ITを活用した働き方に取り組んでおり、今後のオフィス施策にも前向きな意向がみられている。また、今後の取り組み意向をみてみると、各施策に対して9割前後と高い割合で前向きな意向を持っていることがわかっている。現状の導入・検討率が約1割にとどまったサードプレイスオフィスやサテライトオフィスについても、す でに導入・検討している企業に限ると 約6割は前向きな意向を持っている。

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働き方の変化に伴い協働作業ができるスペースに投資すべき

日経BPの記事によれば、近年、働き方の変化と情報技術の進化によって、情報処理型の作業は大幅に効率化されてきている。そのことによって、定型的で分業型の個人作業は減っているのだ。

また、最近では、多くの企業が業務の効率化、生産性向上のために、電子メールやウェブの普及などITの環境を整えていることで、企業組織内では誰もが直接繋がれるようになり、情報発信が容易になったため、連絡伝達のような会議の回数は減少している。連絡伝達の会議ではなく、複雑な意思決定を行うものや、新しいアイディアを求めるものが多くなるために、自分の席にいる時間が減って、会議室で過ごす時間が増えたり、会議室の予約がいっぱいで、打合せ場所が足りないと感じる人が増えている。もちろん、一人で考える「ソロワーク」も増えるかもしれないが、ITを利用してオフィス以外の場所で働く「テレワーク」によって、分散も可能である。

その結果として、オフィス内に残る仕事は、創造的な協働作業が中心になることが考えられる。創造的な協働作業が中心になれば、オフィス空間の構成も変わるべきである。個人用デスクの利用率が下がって、ミーティングスペースや会議室、プロジェクトルームで過ごす時間が長くなるのに合わせる必要がある。そのため、今後オフィス作りを行うのであれば、ミーティングスペースや会議室、プロジェクトルームのような協働作業ができるスペースにより投資することが必要になってくる。

 

多くの企業が感じている「業務の効率化と生産性の向上」に関する課題。それに対応するべく多くの企業では、ITシステムを導入するなどの、前向きな取り組みを行っている。ITシステムが進むことで、誰もがいつでも繋がることができ、オフィス以外でも仕事ができるため、オフィスでは協働作業が中心となる。協働作業ができるスペースを作ることで、より効率の良い業務ができ、また、社内のコミュニケーションも活性化に繋がるだろう。

日本企業は、未来へ向けたオフィス作りを、今一度しっかりと考え直してみるタイミングに来ているのかもしれない。

 

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