オフィスを移転する際の多くのケースにおいて、通常の業務を回しながら移転を行うことになる。そのため社員の業務を考慮しながら計画を立て、実際に移転を進めていくことは思った以上に大変な作業になる。そのため、オフィス移転では社内の協力が欠かせない。そこで、今回は移転を決めてから実際に実行するまで、どのように社内での協力体制を確立しながら進めていくのか、移転計画のポイントを紹介していく。
<参考>
【保存版】オフィス移転How to ~お金編~
【保存版】オフィス移転How to ~書類・手続き編~
【保存版】オフィス移転How to ~基本編~
これは、物件探しやオフィスのデザインを考える際にも重要になってくるのだが、なぜ、どのような目的で移転するのかということを明確化することは真っ先に行うべきことだ。移転計画を進めていくうちに、なぜ移転するのかという軸がブレ、協力もしっかり得られなくなってしまう可能性も高くなる。移転の目的というのは、計画を進める前にしっかり固めて、社内で共有しておくことが必要になる。
新しいオフィスで実現したいことの優先順位付けも重要だ。今のオフィスの課題を整理するだけでなく、今のオフィスのいいところも整理していく必要がある。例えば、駅近が良いとかこのスペースを広くしたいなどの課題の裏返しとも言えるニーズと、今のオフィスの採光はいい、などのポイントを一通り洗い出していく。しかし、多くの要望も、全てを叶えることは難しいため、どこまでのニーズをクリアすべきかをはっきりさせる必要がある。優先順位をつけることで、物件探しなどの検討事項も効率的に決めることができるし、その決定について社内からの不協和音も生じにくくなってくるだろう。
移転についてのチームは総務系の部分だけでなく、幅広い部門からのメンバーを集め、移転の6ヶ月前までには社内でプロジェクトチームを結成するべきである。移転のためのプロジェクトチームでは、少なくとも、ビル移転総責任者、PR責任者、書類責任者、設備・備品責任者、庶務責任者などの役割を担う担当者が必要となってくる。チームを結成するとはいえ、人数が多すぎると決められないことも出てきてしまうため、5~6名程度のメンバーがいればちょうど良いだろう。
メンバーそれぞれの役目があるが、必ずブレてはいけないのが、前述した移転の目的や要望の優先順位である。社内にも方針を徹底させるため、プロジェクトチーム内においては、全員で共通の認識を持った上で計画を進める必要があるだろう。また、チームで動くとはいえ、オフィス移転を計画するには多くの時間がかかるため、時間には余裕を持ってチームを編成し、打ち合わせを始めるべきである。
まずは、移転日を決定することからはじめる。そのベースとなるのは、現在のオフィスの契約状況だ。現在のオフィスの契約状況については、解約予告や原状回復の条件確認が重要だ。オフィスの賃貸契約を解約したい希望日の6ヶ月前までに解約予告を行わなければならないケースが大半である。この時期を確認せずに移転日を決めてしまうと、賃料を不必要に二重に支払う可能性が出てきてしまうので、入居時に交わした賃貸借契約書をしっかりと確認すべきである。
日付ベースの移転日の確定は通常業務の兼ね合いが重要になるだろう。社内外でのイベント日程、社内の各部門との調整、同じビルに入る予定の他社の引っ越し予定を考慮して決める必要がある。日付まで決まったら、引っ越しに必要な作業をピックアップし、詳細なスケジュールを作成していく。通常の業務を行いながら移転を進めなければならないため、業務側との調整が必要となってくるものだ。例えば、移転後すぐに電話回線やネットワークを利用できないと業務は完全にストップしてしまうため、電気やネットワークの配線は重要だ。しかしオフィスレイアウトによってはそれらは工事が必要になる場合があるため、その段取りなども重要になってくるだろう。
見積もりが低ければ低いほど会社にとっては良い。たくさんの企業から見積もりを取って比較すべきである。その資料が交渉資料となるかもしれない。引っ越し業者の見積もりを比較できるサイトも充実しているため、活用するのが良いだろう。下記の過去記事も参考にすると良い。ただ、見積もりは引越し業者のクオリティとも直結する部分もあるため、そのあたりは慎重に価格交渉をしていく必要があるだろう。
参考記事:オフィス移転・引越しに特化した業者比較見積もりサイト6選 - 住宅用と異なる多岐に渡るサービス範囲
大きな会社であるほどトラブル対応やリスク回避策が整備されている場合が多く、機密情報が漏洩したり、トラブルが発生した場合にしっかり補償をしてくれる場合が多い。また、引っ越し以外でも内装工事、またはアフターケアが充実している会社だと、コスト削減になり、費用対効果が高まる。
社員向けの移転マニュアルには、移転の目的はもちろん、移転スケジュール、新ビルの所在地(地図・交通機関)、各フロアレイアウトと設備、食堂・会議室などの共通設備、電話系統略図、荷造りについて、クライアント対応などを掲載し、トラブルが起きないように情報共有をしておくことが大切となる。マニュアルを作成し、事前に配布した上で、オフィス移転説明会を実施するべきである。
移転の前後にはトラブルは必ず起きるだろう。特に人数が多ければ多いほど、その可能性は高くなる。トラブルが起きた時に、どこに連絡すべきなのか各所で担当者を決め、窓口を作ることで、トラブルの情報を一元管理することが必要である。
オフィスの移転を計画する際に注意するべきことを挙げた。移転を実施する際、手続きや提出書類などのことばかりに気を取られそうだが、一番大事なのは社員が働きやすい環境を作ることである。情報共有をしっかり行い、効率の良いオフィス移転が実行できると良いだろう。