業種や規模、来客の有無など、あらゆる要素を考慮しながらデザインされるオフィス空間。その企業によってベストと言える空間は千差万別だが、中でも専門的な職種になればなるほど、その特徴にはいくつかの共通点があるようだ。今回スポットを当てるのは、一般市民にはまだまだ敷居の高いイメージのある「法律事務所」。働く者のみならず、相談者や依頼者にも心地良い法律事務所とは?
ここではいくつかの事例と共に、「法律事務所」のオフィスデザインの在り方を考えていく。
近年、サービス業という意識が根付き始めたものの、まだまだ一般市民がふらりと訪れるには敷居の高い「法律事務所」。自身では解決できない重大なトラブルを抱えて訪れる相談者にとって法律事務所とは、まずは安心し、リラックスできる空間であるということが大切だ。
出典:事務所デザイン
デザイン:株式会社アドアルファ
群馬県館林市にある「六花アトリエ法律事務所」は、「カフェのように立ち寄りやすい事務所」をコンセプトにデザイン。まるで家族でダイニングテーブルを囲んでいるかのような大きなテーブルや柔らかい照明が、訪れた相談者の肩の力を自然に抜いてくれる。
出典:事務所デザイン
デザイン:株式会社アドアルファ
事務所の所々に観葉植物がさりげなく配されているのも、従業員と相談者双方への気遣いから。
洗練されたシンプルさが、落ち着いた印象をもたらす「淀屋橋・肥塚法律事務所」。明る目の間接照明は、相談者の気持ちを少しでも前向きに、明るく照らしたいという想いが込められた。
エントランスに刻まれる社名はローマ字表記で。柔らかく親しみやすい印象を与えるフォントを採用している。
極めてプライベートな内容を扱う場所だからこそ大切にしたいのは、従業員と相談者の厚い信頼関係をもたらす空間づくり。受付から待合スペース、相談室まで、しっかりとプライベートが守られること、更に、他の相談者や従業員と極力顔を合わせることがないような配慮も、その事務所の信頼につながるだろう。
出典:事務所デザイン
デザイン:株式会社フロンティアコンサルティング
大阪市の「堀川橋法律事務所」の廊下は、窓からの光が差し込む明るい雰囲気。相談室をぐるりと囲む廊下に幅を持たせ、同線を整理している。
出典:事務所デザイン
デザイン:株式会社フロンティアコンサルティング
会議室には、外の光を取り入れつつ室内のプライバシーを守るすりガラスを採用。
出典:事務所デザイン
デザイン:株式会社フロンティアコンサルティング
「みなと青山法律事務所」のフローリングは、重厚感の中にもどこか親しみやすさを感じさせる、木の深い色味が印象的。化粧室への動線には書棚を見せるインテリアとして採用した。相談者に知的さや信頼感を感じさせる効果も。
法律事務所のデザインで多くみられるのが、白を基調とした明るいレイアウト。従業員や訪れる相談者の気分が少しでも楽に、前向きになるよう願いの込められたカラーリングが目を引く。窓から差し込む太陽の光を積極的に取り入れるオフィスも多い。
窓から日比谷公園の景観を望むことができる「日比谷中田法律事務所」は、その恵まれた立地を最大限に活かしたオフィスデザインが特徴的だ。公園の緑をより身近に感じられるよう、個室間仕切りには全てクリアガラスを採用。自然に囲まれた明るく開放的な空間を目指した。
出典:事務所デザイン
デザイン:株式会社翔栄クリエイト
千代田区の「ほくと総合法律事務所」は、廊下の壁面がすべてガラス張り。暗くなりがちな通路も、明るく閉塞感を感じさせない空間に。すりガラスで会議室内のプライバシーを守りつつ、外からでも中の使用状況を一目瞭然で把握できる、セキュリティ面にも配慮したオフィスだ。
最近では、古くからの法律事務所のイメージに縛られず、あえてユーモアのあるスタイリッシュなデザインを取り入れるオフィスも。
出典:事務所デザイン
デザイン:株式会社翔栄クリエイト
千代田区の「ほくと総合法律事務所」は、星座の北斗七星の形をあしらった「柄杓」をインテリアに採用。柄杓の花器に、サボテンを植え、ニッチ(壁に造った窪み)に配している。訪れた人がふと「ダジャレ」に気づき心を和ませてほしいという、事務所側の思い遣りが滲むインテリアだ。
出典:事務所デザイン
デザイン:株式会社翔栄クリエイト
同事務所の別の会議室には、事務所名の北斗七星をピクトグラムで表現したパネルを配置。法律事務所には珍しい鮮やかな赤色がスタイリッシュな印象をもたらしている。
まだまだ堅苦しく敷居の高いイメージが定着している「法律事務所」。しかし最近では、「相談者」の目線に立った親しみやすくスタイリッシュなインテリアを取り入れる事務所も増えてきている。「法律事務所」のあるべき姿を追求しつつ、従業員にも相談者にも居心地の良い、選ばれる事務所デザインを目指したい。