名刺やメールの署名などで先方の目に触れる機会が意外に多く、会話の種になることも少なくないオフィスの住所。起業や移転を考える際は、予算や周辺環境、業種による行動範囲などの自社の事情を踏まえるのはもちろんのこと、その土地の持つブランドイメージも考慮しておきたいところ。2015年11月に行われたオフィス立地ブランド調査では、丸の内や銀座に続き、日比谷、恵比寿、表参道なども僅差で高得点を獲得。23区内には人気オフィスエリアが分散しているという結果を見て取れる。ここではオフィスの拠点として人気の高い都内のエリアに焦点を当て、様々な角度からその場所を選ぶメリットを考えていきたい。
メガバンクや大手商社、不動産系企業などが集まり、約23万人ものオフィスワーカーが通勤する日本の代表的オフィス街「丸の内」。2002年竣工の「丸の内ビル」を皮切りに再構築が勧められたこの地区には、まるでヨーロッパのどこかの国にいるような錯覚に陥るほどの洗練された空間が広がる。このエリアは、日本最大級のターミナル東京駅を拠点とし、地下鉄千代田線の二重橋前駅も利用可能。新幹線の利用も身近で、地方出張の多い業態には最適な立地としても圧倒的な人気を誇るエリアだ。これだけ大きなオフィス街だが、複数路線が利用できることで混雑を避けられるのも通勤者にはありがたいポイント。駅前には大きな商業施設を複数構え、会食などの手土産も手に入りやすく、アフター5のショッピングも楽しめる。また、皇居外苑が近く、大都会にいながら緑が望めるというのも人気の理由の一つだ。
とにかく地名のブランド力が高いのは「銀座」。高級百貨店や世界的ハイブランドの旗艦店などが建ち並ぶ街には、広告代理店やITベンチャー、人材会社などのトレンドに敏感な業種が自ずと集まっているよう。お洒落な高級街のイメージさることながら、一方で交通アクセスの良さも人気の理由。銀座駅には地下鉄丸の内線、銀座線、日比谷線が、そして銀座駅から徒歩数分の有楽町駅にも山手線と京浜東北線が乗り入れる。更に、有楽町線の「銀座一丁目駅」や都営浅草線と東京メトロ日比谷線の「東銀座駅」も集まり、銀座エリアだけで実に4駅の利用が可能だ。営業の拠点としても抜群のパフォーマンスを発揮できる点に人気が集まっている。
日本初の西洋式ホテル「帝国ホテル」や「鹿鳴館」が建てられた日比谷には、明治の趣を残した建造物が多く立ち並ぶ。中には、当時の建物をそのままオフィスとして使い続ける大手企業も少なくない。地方裁判所や法務省などの政府機関などが集まる重厚な街並には、金融や保険会社がよく似合い、こうした関連業界に人気が高いようだ。銀座も徒歩圏内、公園の緑も身近な日比谷。仕事帰りにはショッピングやグルメを楽しんだり、日比谷公園、皇居外苑周辺のランニング等で一汗かいたりと、アフター5の過ごし方にもバリエーションが持てそう。空港直通のリムジンバスも通っており、海外出張の多い企業にとっても大きな魅力となっている。
恵比寿ガーデンプレイスを中心に、緑が多くお洒落なショップが充実する恵比寿は、「住みたい街」としても人気の高いエリア。近隣に住み、自転車で通勤するオフィスワーカーの姿も多い。明治通りと駒沢通りに隣接しJRと地下鉄日比谷線の利用が可能で、代官山や六本木などへのアクセスが容易。更に神奈川や埼玉へのアクセスにも申し分ない立地だ。いつでもクライアント先へ短時間で出向くことができるので、フットワークの軽さを重視したい企業におすすめ。大手食品・飲料メーカーからIT系のベンチャー企業まで、幅広い業種が目立つこのエリアは、丸の内や銀座に比べてオフィスの賃料が比較的安価なのも大きな魅力。駅ビル内にはコンパクトながら高感度なショップが占め、手土産選びやアフター5のショッピングにも事欠かない。
渋谷、原宿と隣接しながらも、これらの地域とは一線を画した大人の雰囲気を漂わせる表参道。参道には世界的ブランドの旗艦店が集まり、かねてより、特にアパレル業界においては、このエリアにオフィスを持つことがステイタスとされた地区だ。現在でも表参道ヒルズを始め、東急プラザ表参道原宿、AOビルなどの流行の発信拠点となる商業ビルが点在している。一方で、一本裏道に入ると閑静な居住空間が広がり、高感度なセレクトショップやカフェなども見つけられるエリア。美術館やギャラリー、大学や小学校なども隣接し、アカデミックな魅力も持ち合わせるので、アパレル系はもちろん、建築やデザインなどクリエイティブな業種にも人気の高い地区。地下鉄銀座線、千代田線、半蔵門線が乗り入れる表参道駅と、地下鉄千代田線、副都心線の乗り入れる明治神宮前〈原宿〉駅、更に数分歩けばJR原宿駅も利用できるという良好な交通アクセス環境も人気の理由だ。
オフィスをどこに構えるかは、会社のブランディングを大きく左右する可能性も秘める大切な要素。起業、または移転を考える際、どのような会社になりたいか、そしてどのような会社に見られたいか、そのエリアの持つイメージを加味しつつ検討したいもの。予算やアクセスを考慮しつつ、快適に、そして楽しく働ける環境を探したい。