企業がオフィスの「デザイン」を重視することは、無意味なことなのだろうか。答えは間違いなくNOである。

例えば多くの学生は、就職活動時にオフィス環境を重視しており、また、実際に働いている多くの社員もおしゃれなデザインのオフィスで働きたいと思っていることが調査によりわかっている。つまり、オフィスのデザインは企業選びや働き続ける上で重要なポイントとなっているのである。そこで、今回は、学生のオフィスデザインに関する考えと、実際に働いている社員のオフィスデザインに関する考えを調査をもとに見ていき、良い人材を採用し継続して働いてもらうためのオフィスデザインの在り方について考えていく。

 

学生のオフィスに関する意識

フロンティアコンサルティングが2016年卒の就職活動生400名を対象に行った「オフィス環境に関する調査」によれば、就職活動時に、企業に求めるものは、「希望する職種である」が54.5%、「福利厚生」が53.3%、「安定している」が51%だった。そして、「オフィスの環境」も41.8%と多くを占めており、オフィスの環境が就活生にとって企業選択の一つの重要な要素であることがわかる。また、就職活動時に、オフィス環境をどの程度重視するか聞くと、「かなり重視する」が27%、「どちらかというと重視する」が64.5%で、合わせると90%以上の学生がオフィスの環境を重視するという結果が出ている。

 

また、JOBRASS新卒が行った、どういう基準で、2016年卒の学生が何を重視して企業選びをしていたのかという調査によれば、1位は事業内容、2位は会社・社員の雰囲気、3位は業界、4位は職種、5位は採用担当者の人柄という結果となっている。この結果としても、2位に会社・社員の雰囲気がランクインしており、学生にとって会社の雰囲気は重要であるということが言える。

 

働く社員のオフィスに関する意識

アーバンプランの調査によれば、おしゃれなオフィスデザインの会社で働きたいと思いますかという問いに対し、約70%の会社員が働きたいと答えた。毎日職場に行くのが楽しくなるようなデザインであれば社員のモチベーションアップにもつながるという意見や、ただオシャレなデザインというだけではなく、機能的に考えられたオフィスがあれば良いと思うといった意見が見られた。つまりおしゃれなオフィスで働きたい理由としては、「純粋に憧れている」、「友人に自慢したい」という意見が見られる一方で、「モチベーションが上がるため」と答えた社員も多いことから、おしゃれで整った環境を作り上げることで業績アップにつながり得るということがわかった。

 

一方でそのような理想と現実のギャップを示すデータもある。USENが行ったオフィス環境に関する調査によれば、6割の人がオフィスに不満があると答えていることがわかっている。2015年12月から義務化されている「ストレスチェック」の実施可否について質問したところ、実施している会社は5割程度という結果になり、2016年11月末日にストレスチェックの実施期限を迎えるにも関わらず、定着していないことがうかがえた。「オフィス環境に満足しているか」ということについて尋ねた結果、全体では「あまりあてはまらない」が44.0％と最も多く、次いで「ややあてはまる」が35.4％、「全くあてはまらない」が15.4％、「とてもあてはまる」が5.2％となった。この結果から過半数の人々が、現状のオフィス環境に満足していないことがわかっている。また、「あなたの会社でオフィス環境改善策として実施してほしいことはありますか?」という質問に対し、「休憩室の設置」が43%と最も多く、次いで「音楽を流す」が24%、「デスク配置変更などの模様替え」が21%という結果となった。

 

数々のアンケートや調査から、まず就職活動をする学生にとって、オフィス環境は企業選びをする上で大きな判断要素となっているため、学生が求めているようなオフィスデザインを作ることが重要なポイントとなっているのは間違いないだろう。また、会社に入る前の学生だけでなく、働いている社会人もオフィス環境を重視していることも調査より明らかになっている。しかし、多くの人々がオフィス環境に満足しておらず、会社もまだまだ対応しきれていないのが現状である。そこで、優秀な人材を確保したり、優秀な人材が優れたパフォーマンスを発揮しやすくしたりするためにも、オフィス環境を見直し、おしゃれで働きやすいオフィスデザインを作り上げていく必要があるだろう。このような視点でのオフィス作りというのをしっかり進めていってもいい時代に来ているのではないだろうか。