「働き方改革」の本格導入によって、生産性の向上が企業の大きなテーマとなっている昨今。生産性向上には業務内容や就労時間の見直しはもちろん、オフィスのレイアウトも一つの要因として作用すると言われている。ここではデスクの配置や空間の設け方など、仕事を効率良く行うためのポイント3つを紹介していく。
これまでの日本のオフィスは「島型」のレイアウトが主流であった。これは、部署やグループごとにブロッキングし、デスク同士を向かい合わせ、その端に上長を配するというもの。この島型のメリットは、隣同士のコミュニケーションが取りやすい点や、部署内の情報をすぐに共有しやすい点などがある。
一方、デメリットとしては、隣や向かい側の席の人と目が合いやすく、常に監視されているように感じさせることもあり、精神的に疲れやすいという点だ。さらにオフィスの広さや人数、密度、スペース次第では、隣同士の距離が必要以上に近くなってしまい、それがストレスになるというケースもある。
このような環境に身を置くと、取り組むべき仕事に集中できなくなり、仕事の効率化に結びつかないといった問題点も。場合によっては、この島型のレイアウトが本当に職場の状況に適切なのかを見直す必要があるかもしれない。
狭いオフィスにありがちなのが、キャビネットなどの家具や機器が多く配され、導線が迷路のようになっているレイアウト。こうしたレイアウトはオフィスを余計狭く感じせてしまうことも。またプリンターへの行き来や備品の取り出しなどでオフィス内を移動する際にも、都度遠回りになってしまうので非効率だ。移動を後回しにしてすべきことを忘れてしまったり、煩雑さにより社員の集中力を欠いてしまったりというリスクも考えられる。
社員が快適に効率良く仕事をこなすには、何といっても空間の比率が鍵。オフィスのレイアウトを考えるなら、圧迫感があるOA機器やパーテーションなどの配置を最低限にとどめ、従業員の心にゆとりが持てる空間にしておくことが大切だ。因みに、そうした家具や機器以外に70%以上のフリーな空間を確保できると良いとされている。
また、隣同士のスペースに余裕を持たせ、他人が踏み込めないパーソナルスペースを設けると、心理的負担が軽減され仕事に取り組みやすいと言われている。
このように、空間を決める際はオフィス全体と個々のバランスも考慮する必要があるようだ。
レイアウトには、部署やチームにおけるデスクの配置も大きなポイントとなる。
中規模以上のオフィスとなると総務や営業、システム開発などといった複数の部署やチームが存在する。それぞれの部署・チームは、担う仕事が違っても、プロジェクトなどがあるとシステム開発とマーケティングといった違うチーム同士が連携して仕事することもよくあるパターンの1つだ。
今の時代、社内のメールやチャットを使えば距離に関係なく連絡事項をすぐに共有できるが、やはり近くで仕事する仲間がいるとちょっとした確認もすぐにしやすいというメリットがある。その他、メールやチャットで伝わり切らなかった内容も直接で話すことでクリアになり、より仕事がスムーズに進むという効果も無視できない。
このように、座席の配置は、部署やチームの壁を越え、プロジェクトベースでレイアウトするのも効果的な場合があるのである。
部署を越えた横のつながりが生まれると、社内のコミュニケーションや雰囲気がより良くなるというメリットも。チームはもちろん、社員全体の結束力がより固くなることで、「1+1=2以上」の相乗効果が生まれるかもしれない。
スペースの関係で、どうしてもデスクや椅子、プリンターなどの業務に必要なものだけで埋まりがちなオフィス。こうした無機質な空間は、社員にとっても味気のない、つまらない印象を与えてしまう。社員が伸び伸びと健やかに仕事に向き合うためには、一部でも開放的なリラックススペースを設けることが必須だ。
ここに実際の企業の例を紹介する。例えば、大手SNS企業では、各個人のデスクに向かう途中で、必ずラウンジなどの共有スペースを通過するレイアウトにしている。また大手IT企業では、カフェスペースやヘアサロン、フィットネスクラブ、託児所まで有するショッピングモールさながらの施設をオフィスビルに内包した。その他、仕事の合間の小休憩を目的とした「寝る」専用のスペースを設けたというユニークな事例も。
以下にその他個性的なリラックススペースの事例を紹介する。
・株式会社SmartHR
出典:事務所デザイン.com
家のリビングを思わせる温かみのあるリラックススペース。大きな窓から見える緑や、開放的な空間が特徴的。社員同士の会話も自然と弾んでしまいそう。
・BOS Automotive Japan株式会社
出典:事務所デザイン.com
落ち着いたこげ茶のソファの上には数々のクッションが。リラックススペースが各個人のデスクや会議室に囲まれているため、立ち寄りやすく会話も生まれやすい。竹林のグラフィックや透明感のあるロールスクリーンでりラックス効果を上げるという工夫も。
・株式会社gloops
出典:事務所デザイン.com
ダーツや卓球があり、リフレッシュすることができる。仕事に支障をきたさないよう制限時間が設けられているという。他にも同企業では、幅広い本をリラックスして読むことができるライブラリーや、社員が靴を脱いで座布団に座り、ちゃぶ台を囲むことができる畳のスペースなど、様々なリラックススペースが設置されている。
・リレーションズ株式会社
出典:事務所デザイン.com
壁に囲まれた個室にマッサージチェアが置かれている。人目を気にせずリラックスできるとともに、座りっぱなしで疲れが溜まった首や肩の凝りをほぐしてくれる。また、ウッド調のバルコニーは果物などの社内菜園になっており、日向ぼっこをすることもできる社員の癒しの場となっている。
共有スペースを設けることは、仕事と休憩のメリハリをもたらし、仕事の生産性が向上する効果も期待できる。オフィスレイアウトを考える場合は、社員のリラックスを目的とした共有スペースの導入も視野に入れると良いだろう。
オフィスのレイアウトは仕事の効率化に直結する重要な要素の一つ。以上に挙げた3つのポイントを取り入れ、社員一人ひとりが気持ち良く仕事に打ち込める快適なオフィス空間を目指していきたい。